満州の歴史を語り継ぐ高知の会
 

■展示会場;高知市文化プラザかるぽーと 7階、市民ギャラリー第一展示室
 高知市九反田2-1
開催日時:2021年11月28日(日)~12月5日(日)9時30分~18時30分
特別講演会
 2021年12月2日午後14時~16時(小ホール)
 宝田明:「俳優として人間として、~満洲の歴史から平和を学ぶ~
主催:王希奇「一九四六」高知展実行委員会

 中国人画家、王希奇氏の油絵と墨絵の融合による独特の技法で、引揚げ船に乗る憔悴しきった数百人の姿を描き上げた縦3m、横20mに及ぶ大作が展示された会場で、開催の式典には、多くの参加者がありました。
 入場者総数は、2782名にのぼり、そのうち、大学生と高校生の若い入場者が179名を数えました。県外からの入場者も多く、実行委員会の入場者目標数を大きく上回りました。入場者は、絵画を見た後に、引揚げに関する資料室にも長く立ち寄っていただきました。また、壁に貼った資料をゆっくりと読む方が多かったことは、大きな喜びでした。この高知展示会開催に際しては、高知大学の学生たちによる実行委員会が立ちあげられ、SNSによる発信などもあり、若い世代にも反響が広がりました。
 会場受付や会場の案内などは、約60人のボランティアに支えられ(複数日も協力して頂いた方もありました)、トラブルもなくスムーズに開催できた大きな要因となりました。

王 希 奇 Wang Xiqi

 画家。中国錦州市に生まれる。魯迅美術学院油絵学部に勤める。中国美術家協会会員。 東洋的墨絵の要素を西洋油絵に自然に融合させた画風で評価される。
 特に歴史をテーマとする創作を得意とし、その独特な画風とオリジナルな視点で国内外の注目を浴び、既存の流派に属さない独立した芸術家と評される。なかでも、国家金メダルを獲得した《三国志・赤壁の戦い》(合作)、中国国家重大歴史題材美術創作プロジェクト入選作品《長征》、《遼瀋戦没 攻克錦州》(合作)および《官渡の戦》などの大型絵画が代表作である。
 油絵のほか、墨絵の《回声》、《高原人》、《聴雷》などの作品も全国美術作品展に入選。数多くの作品が中国美術館、中国国家歴史博物館、中国国家軍事博物館などに収蔵されている。

 近年では、2012年から2017年にかけて、葫蘆島港より105万人余の残留日本人の大送還を テーマとした大作《一九四六》(縦3×20メートル)をはじめ、関連するシリーズ作品計50 点を制作した。

王希奇「一九四六」を語る DVDの翻訳

 私は歴史写真を集める習慣がある。歴史写真が大好きなのだ。過ぎ去った月日は美しいものだと思っていた。そして経験したことのない過去の歳月において当時の人々はどのように生きていたのか、どんな状態にあったかを知りたいと思う。また、その時、私はどこにいたか、常に自分に問いかけたのだ。私は、自分の視覚の命を延ばすには、これまでのことを掘り起こさねばならないと思う。
 ある日、私はネットで、1セットの写真をみつけた。その中で、ある男の子が、あるものを胸に抱えていた。その時、何が包まれていたか知らなかったが、ただ男の子の表情がとても印象深いものだった。調べていたら、それは1946年に起きた出来事であったことを知り、そして、それが当時撮影された写真だとわかった。その後、私は何度もそのほかの資料と歴史写真を知らべたりして、遠く歴史の埃(ちり)に埋もれそうになったこの歴史を知ったのだ。また、その残酷さを身に染みて感じ取った。
 この「一九四六」を創作するには、3年半の時間がかかった。その期間には作品を覆して再構築し、そしてまた覆して、再構築を繰り返していた。まさにこの絵を創作する過程も、引き揚げを体験したような大変つらい過程だった。
 この「一九四六」という歴史題材について、私は「移動式」という鑑賞の仕方をとった。
人々に歩きながら、この作品を見てもらいたい。人は物事を考える際、無意識に歩き出したりすることがある。歩き出すと考えることにプラスになるようだ。その場合、画面から大量の情報を読みとることが求めれてくると思う。
 私は中国壁画の表現様式、長幅式の表現様式をとった。最終的に絵を長さ20メートル、高さ3メートルに決めた。絵の高さは、見る人が、場面の外側にいるか、あるいは画面の中に入るかということを左右する。私は皆さんに、この歴史の現場に入りこみ、左から右へ移動しながらみていただきたいのだ。画面の色彩、見る側のリズム、光の配置などを考慮し、特別な手法を使用した。いわゆる科学による光線の配置手法を取らず、私自身の理解した「ホタル」式の光の手法を取った。個々の人物の放つ光を通じて人々が生き残ろうとして現れてきた生命の強さを表現したいと思った。
 私は、絵画の「読みこなし」も大事だと考える。それは、小説と同じように、一文字、一センス、一段落をじっくり読み込むことによって、最終的に作品全体から何かを感じ取れるだろう。
 私は、絵をみた皆さんに伺いたいのは、絵そのものの良し悪しに関することではなく、この作品から感動を覚えていただけたかどうかということなのだ。

一九四六
2012-15年 油彩・ キャンバス 3 00×2000cm 作家蔵 
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一九四六 見守る海
2017年 油彩・ キャンバス  200×840cm 作家蔵
一九四六 回岸
2017年 油彩・ キャンバス 200×840cm 作家蔵
 
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▼会場風景写真集